事例1:相続登記は、相続発生後お早めに!
亡くなったお父様名義の家に住んでいた長男のAさん。お母様はお父様が亡くなる以前に亡くなっており、親族は弟様だけでしたが、弟様もお亡くなりになり、弟様は離婚をされているため親族は、弟様の息子様のBさんだけでした。
Aさんお住まいのお父様名義のご自宅は長男であるAさんが引き継ぎそのまま住むというお話し合いが弟様の生前されていましたが、登記はなされず、書面もかわされずにいらっしゃいました。
その後Aさんはご自宅の売却の検討を始められ、不動産屋さんに相談しにいったところ、 登記名義をAさんにする必要があるといわれ、相続登記 をしようとしましたが、それにはBさんの協力が必要なことがわかりました。 ところが、Bさんに協力を頼むと、Bさんは「そんな話は聞いていないし、私もお金が欲しいから、自分の相続分 は貰う」とのことでした。
Aさんと弟様のお話し合いを証明する書面もなく、登記もされていなかったために、結局Aさんは、売却代金からBさんに相続分にあたる金銭を支払うことになりました。 このように、相続登記は普段の生活にあまり影響を及ぼすことがないので、つい放置しがちですが、時間が経過しますと当事者・経済状況・人間関係等に様々な変化がおこり、思いもしない結果になることがあります。
また、手続きの費用面においても、相続発生から時間が経過して関係が複雑になると、手続きも複雑になり、発生後すぐに手続きする場合と比べて費用が高額になりがちですので、相続登記はお早めにされることをお勧め致します。
事例2:相続争いが予想されるときには、必ず遺言を残しておきましょう
お亡くなりになったAさんには、前妻との間に子供が一人(未成年)と、現在の奥様がいらっしゃいました。奥様はAさんから「前妻は財産はいらないと離婚したから」と聞いていました。
奥様は、Aさんの相続手続きを進めようとしましたが、前妻との子供にも相続権があるため、遺産分割協議 が必要となることがわかりました。しかも、その子が未成年であるため、その法定代理人である前妻にも協力してもらう必要があることもわかりました。
奥様が前妻に連絡をすると、「確かに私は財産はいらないけど、子供には財産を相続させたい」と主張されてしまい、奥様と前妻の関係上、話し合いがうまくいくはずもなく、話し合いは不調に終わりました。
結局、Aさんの遺産はご自宅の不動産だけで、前妻の子には相続分にみあう金銭を支払わなければならなくなりましたが、奥様はそのお金を工面することが出来ず、ご自宅を売却するはめになってしまいました。
この場合、奥様に財産(ご自宅)を相続させるという内容の遺言 があれば、遺産分割協議の必要がなくなり、相続手続きを進めるのに前妻に協力を求める必要もなく、自宅を手放すようなことは避けられたかもしれません。
ただし、前妻との子には遺留分 がありますので、遺言を残す場合でも、遺留分を考慮した遺言にしておくか、遺留分を主張された時、遺留分を支払えるだけのご自宅以外の財産を準備しておくなど、生前に対策をしておく必要はあります。
どのような対策が有効であるかの具体的な対策内容については、個々のケースによって異なりますので、まずはお気軽に当センターまでご相談下さい。
事例3:遺言は将来のための保険です
独身でお子様もおらず、ご両親もお亡くなりのAさんがお亡くなりになり、同居されていたご兄弟のBさんは、相続人である他のご兄弟のCさん、Dさん、Eさんと遺産分割協議 を行い、Aさん名義のマンションをBさん名義にし、そのまま住むおつもりでした。
しかし、Dさんが高度の認知症であり、分割協議を行うことができないため、Dさんの奥 様を成年後見人として家庭裁判所で選任してもらい手続きを進めました。
その選任手続きの過程でDさんの奥様は、Aさんの相続手続きに関して、被後見人の権利 確保のため、Dさんの法定相続分を確保するように言われました。Dさんの奥様自身は、相続財産はいらないと考えていましたが、意思決定ができない被後見人であるDさんの権利を守るため、結局Dさんに法定相続分を支払い、その他をBさんが相続するという内容の関係者の意志とは異なる協議になりました。
この場合、遺言 があれば遺産分割協議の必要がなくなり、相続発生後の手続きが簡略になります。また、遺言にBさんに相続させると書いておけば、本件の場合では、皆様がそのことに納得されていますので、Bさんが単独で相続できた事案です。
「相続人同士は仲が良いし、相続争いなど発生しないので遺言なんて不要だ」と思っていても、この事例のように、遺言がないために余計な手続きが必要となり、関係者の思いと反する結果になることもあるのです。
遺言は、ご自身の意志表示という意味だけにとどまらず、相続開始後の相続人の方々の負担を減らすという意味からも有効な手段ですので、ぜひ一度ご検討下さい。