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相続税は、相続または遺贈により遺産を取得した場合にかかってきます。相続とは、法律(民法)で定められている法定相続人が遺産を取得した場合をいい、遺贈とは、遺言によって相続人やその他の人が遺産を取得した場合をいいます。
相続税には基礎控除があり、取得した遺産の評価額が基礎控除の金額以下であれば、相続税はかからず、税務署に相続税の申告をする必要もありません。 また、評価額が基礎控除を超えてしまう場合でも、生前贈与を活用したり、相続税の申告をすることで利用できる税務上の各種特例(配偶者の税額軽減、小規模宅地の評価減)を活用することで、相続税をかからなくしたり、大幅に減額することが出来るケースがあります。

相続税対策には下記のような様々な対策があります。しかし、どういう場合にどういう対策をとるのが最も有効であるかについてはケースバイケースであり、対策にはメリットとデメリットがありますので、誤った対策をしてしまうと思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。
自分には相続税はかかってくるのか?かかるとしたら、どれくらいかかるのか?また、どのような相続税対策をとるべきなのか?と不安に思っている方は、提携の税理士・公認会計士がお答えしますので、お気軽にご連絡下さい。

1、暦年贈与(一般贈与)の活用

一般的に、贈与税は相続税の補完税といわれており、相続税逃れを防ぐために作られた税金です。そのため、贈与税は相続税より高い仕組みになっていますので、そんな贈与を利用することが相続税対策につながるのか、と疑問に思う方もいらっしゃるかと思います。

たしかに、贈与税の税率は非常に高く設定されていますが、贈与税には毎年110万円までの贈与について非課税となる「基礎控除」というものがあり、これは毎年利用できるという点や、贈与する相手は子や孫に限らず誰でも良いという点で、非常に使いやすいものとなっております。

暦年贈与の活用とは、簡単に言うと、基礎控除を利用して毎年コツコツと110万円以下の贈与を繰り返して、非課税で財産を移動するというものですが、場合によっては、この基礎控除を超える贈与を繰り返し、ある程度の贈与税を負担しても、相続税とトータルで考えれば節税となることもあります。
以下の事例で、その仕組みを簡単にご説明いたします。

事例)夫がすでに死亡しており、子が3人いるという妻が遺産総額3億円を持っていて、子3人それぞれに①0円(=暦年贈与を利用しない)、②110万円、③500万円を10年間贈与した場合。
(税額はいずれも相続人である子3人の合計のもので、税額は概算の数字となります。)

贈与税額 相続税額 合計
1、暦年贈与を利用しない場合・・・ 0円 4500万円 4500万円
2、110万円ずつ贈与する場合・・・ 0円 3510万円 3510万円
3、500万円ずつ贈与する場合・・・ 1590万円 900万円 2490万円

この事例では、暦年贈与をしない場合に比べて、110万円ずつ贈与すると約1000万円の節税効果があり、500万円ずつ贈与すると、贈与税こそかかってしまいますが、相続税とのトータルで考えると、なんと約2000万円も節税の効果があります。 節税のポイントは、「遺産総額」と相続税・贈与税の「実効税率(実際の取得財産額に対する税額の占める割合)」です。この事例は、あくまでは一例にすぎず、暦年贈与を用いて相続税対策される場合、綿密な計算が必要となりますので、提携の税理士・公認会計士にご相談ください。

これだけは気をつけよう!暦年贈与の活用上の注意点

生前贈与を利用する際には、以下の点に十分注意する必要があります。

2、相続時精算課税制度の活用

相続時精算課税とは?

相続時精算課税制度は、2003年度の税制改革で、若い世代への資産の移転をスムーズに進め、お金の循環を促し、経済活性化を図る目的で誕生した制度です。
相続時精算課税の適用を受けると、2500万円までの贈与であれば贈与税が非課税となります。

しかし、贈与者が亡くなったときには、遺産にその贈与を受けた財産を加えて相続税を計算しなければいけません。つまり、贈与時に非課税扱いとなるだけで、贈与者が亡くなった相続時には、贈与された財産は相続財産と合算されて相続税が課税されることになりますので、この制度を利用しての贈与は、あくまで「相続財産の前渡し」と考えるべきです。

しかし、生前にある程度大きな財産を非課税で移動できますので、遺産が相続税の基礎控除以下で、相続税がかからない見込みの人などには、大変有意義な制度といえます。

相続時精算課税のメリット・デメリット

● メリット

※例えば、子が親から家賃収入のあるアパートを贈与された場合、子は家賃収入を「相続財産」としてではなく、「自己名義の収入」として受け取ることができます。そのため、相続時にアパートを受け取る場合と比べて、子が自己の収入として早期に金銭収入を得られることに加え、「相続財産としての家賃収入」の増加を防ぐことが出来ます。

● デメリット

相続時精算課税制度利用時の注意点

贈与時の要件等は次の通りです。

3、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度の活用

住宅取得等資金の贈与税の非課税制度とは?

平成24年1月1日から平成26年12月31日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から、自己の居住の用に供する家屋の新築若しくは取得又はその増改築等のための金銭を贈与により取得した場合において、一定の要件を満たす場合、下記金額までの贈与につき贈与税が非課税になる制度です。

● 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税限度額

贈与年 平成25年中 平成26年中
省エネ・耐震対応住宅 1,200万円 1,000万円
一般住宅 700万円 500万円

<要件について>

下記の全ての要件を満たす必要があります。

  1. 住宅の取得に充てるために金銭の贈与を受け、実際にその金銭を住宅の
    取得資金に充てていること。
    居住用の不動産そのものの贈与や、住宅取得後に金銭の贈与を受けた場合は、
    対象になりません。
  2. 父母や祖父母等の直系尊属からの贈与であること。
  3. 受贈者が、その年の1月1日において20歳以上であること。
    贈与を受ける者が、贈与があった年に成人でないと適用されません。
  4. 贈与の翌年3月15日までに住宅の引渡を受け、同日までに居住していること、
    又は居住することが確実であると見込まれていること
  5. 建物の登記簿面積が50㎡以上240㎡以下であること。
    登記簿謄本上の面積が50㎡以上240㎡以下の物件が対象となります。
  6. 中古住宅の場合、建物の築年数が、マンション等耐火建築物なら25年、
    木造等耐火建築物以外なら20年以内であること
  7. 贈与の翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告を行っていること。
    贈与税が発生しない場合でも、申告期限内に贈与税の申告が必要になります。
  8. 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。

4、小規模宅地等の特例の活用

小規模宅地等の特例とは?

相続財産において不動産の占める割合が非常に大きい場合、その不動産に多額の相続税がかかり、相続税を払う現金が用意できないので、結局せっかく相続した不動産を手放すことになってしまった・・・というのは、相続にありがちな悲劇です。

このような悲劇を救済する目的で誕生したのが、「小規模宅地等の特例」という制度です。相続又は遺贈により取得した財産のうち、被相続人等の自宅の土地や事業用の宅地、貸付事業用の敷地などを子が相続する場合、一定の要件のもとで、相続税評価額を50~80%減額できる非常に有用な特例です。

この特例は、特定事業用宅地等、特定居住用宅地等、特定同族会社事業用宅地等及び貸付事業用宅地等のいずれかに該当する宅地等であることが必要です。

また、平成26年1月1日以降は下記のような特例の緩和があります。

  1. 二世帯住宅の構造上の要件の緩和
  2. 老人ホーム入所要件の緩和

更に、平成27年1月1日以降には、下記のような特例の拡充があります。

  1. 特定居住用宅地等(自宅敷地)の適用対象面積の見直し
  2. 特定事業用宅地等(商売用敷地)と特定居住用宅地等を併用する場合の限度面積の拡大

当制度は、適用要件を満たせば最大80%減額という、非常に大きな減税を受けることが出来る制度であるため、要件についてもそれぞれ細かく定められています。詳細を詳しく知りたい、聞いてみたいという方は、提携の税理士・公認会計士がお答えしますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

※なお、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や、相続時精算課税を選択して贈与により取得した宅地等については、この特例の適用を受けることはできません。

5、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の活用

教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度とは?

30歳未満の受贈者の教育資金に充てるために、その直系尊属が金銭等を拠出し、金融機関等に信託等をした場合、受贈者1人につき1,500万円(学校等以外の場合は500万円)までの金額に相当する価額について、贈与税が非課税となる制度です。

※教育資金とは、文部科学大臣が定める次の金銭をいいます。

  1. 学校等に支払われる入学金、授業料その他の金銭
  2. 学校以外の物に教育に関する役務の提供の対価として支払われる金銭のうち一定のもの

● 贈与時の要件等

【申告】

受贈者はこの特例の適用を受けようとする旨の教育資金非課税申告書を、金融機関を経由し受贈者の所轄税務署に提出しなければなりません。

【払出しの確認等】

受贈者は、払出した金銭を教育資金に充てた場合は、領収書等に記載された支払年月日から1年以内に、それ以外の場合には支払年月日の翌年3月15日までに、金融機関に領収書等を提出しなければなりません。

【終了時】

※両親や祖父母が「その都度」教育資金を援助する行為は現在も非課税です。

今回のこの制度は、しばらく使う予定のない資金を、教育資金としてまとめて贈与した場合も非課税になる、というのが特徴です。

6、貸家建付地等の評価の活用

貸家建付地等の評価とは?

更地に賃貸住宅を建築して貸家建付地とすることにより、更地よりも貸家建付地の方が2~3割評価が低くなります。これを利用することで、相続財産の評価額を下げることが出来ますので、相続税対策として有効なものとなります。

しかし、賃貸住宅を建築した後の収益性や資金繰り、今後のキャッシュフローを十分に考慮しないと破綻するリスクがあるので、事前の資金計画・専門家への相談が不可欠です。

  1. 更地の評価
    更地の評価は、路線価のある宅地については路線価を基に評価し、路線価の宅地は、(固定資産税評価額)×(国税局長の定める一定の倍率)で評価する倍率方式によります。
  2. 貸家建付地の評価
    貸家建付地とは、貸家の敷地の用に供されている宅地をいいます。

    また、貸家とは、借家権の目的とされる家屋をいいます。 貸家建付地の評価は次の算式により計算されます。
    (貸家建付地の評価)=(自用地の評価)×(1-借地権割合×借家権割合)

※借地権割合と借家権割合は地域ごとに路線価図に示されています。

例えば、自用地の評価が1億円の宅地で、借地権割合が60%、借家権割合が30%であれば貸家建付地の評価は1億円×(1-60%×30%)=8,200万円になり、18%評価が下がります。  また、賃貸住宅を建築することにより、貸家建付地は住宅用地に該当し、固定資産税において普通の更地などより約1/3~1/4程度の税額軽減が受けられます。

● 貸家住宅の評価も下がる

通常、建物の相続税評価額は、固定資産税評価額をそのまま利用することになりますが、その建物が賃貸されている場合は、次の算式によります。
(賃貸の建物評価額)=(固定資産税評価額)×(1-借家権割合)
また、固定資産税評価額は通常、建築価格の60%~80%で評価されます。その価格に借家権割合を控除した割合をさらに乗じますから、結果的には建築価格の50%程度の評価になります。

7、生命保険金の非課税制度の活用

生命保険金の非課税制度とは?

死亡保険金は、「残された家族の生活保障」という大切な目的を持った遺産ですので、一定の生命保険金が非課税とされています。相続人が保険金を受け取る場合に限り、「500万円 X 法定相続人の人数」が非課税金額となります。 ※非課税金額計算上の法定相続人数には相続を放棄した者も含まれます。

 

※相続税に関するご相談については、提携の税理士・会計事務所が担当させて頂きます。